改めて再保険ブローカーの重要な役割について
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キャプティブの仕組み, 基礎知識
再保険は保険会社の保険と言われている通り、保険会社が再保険料を払って、自ら引き受けたリスクを他の保険会社に移転することです。この再保険取引の関係において、再保険料を払い再保険を掛けることを出再(しゅっさい)、再保険料を受け取りリスクを引き受けることを受再(うけさい、じゅさい)と呼びます。出再する保険会社のことを元受保険会社、受再する保険会社のことを再保険会社と呼びます。
過去の記事でも述べましたが、元受保険会社が出再するには一定の再保険料を支払うことになるため、もし仮にリスクが現実化しなかった場合の一定の収益機会を逃すことにはなります。なぜ元受保険会社は一定の収益機会を逃しても再保険を掛けるのでしょうか。
保険が成立するためには理論上、リスクが同質であること、独立していること、大数の法則が機能する程度に多量にあることが必要です。しかしながら、巨大な石油コンビナートやタンカー、ジャンボジェット機、といった巨額なリスクがあり、また、広域に多額の損害をもたらす台風やハリケーン、あるいは地震といった自然災害が発生する等、リスクが必ずしも分散されていません。元受保険会社は、このような巨額なリスクを単体では引き受けることはできないため、再保険を有効に活用することによってリスクの分散が可能になり、結果としてこれら巨額リスクや自然災害リスクを引き受けることが出来ます。
再保険会社はそれらのリスクをさらに再々保険を掛けることにより、結果として、個人や企業、一つの国や地域等の単位から世界中にリスクが移転・分散されていきます。
このように再保険取引は、世界各国にまたがる国際的な取引になります。リスクを引き受ける再保険会社は、世界中の元受保険会社からの再保険の引受を行うことになります。しかしながら、それら再保険会社が世界中のどの保険会社のことも熟知しているとは限りません。元受保険会社はリスクに関する詳細なデータを有しているのに対し、再保険会社は元受保険会社が提供するリスク情報のみに基づき、再保険の引受を行います。つまり再保険会社は、元受保険会社の告知する内容を信頼して再保険の引受を行います。
再保険取引においては、元受保険会社は正しい情報を伝えて適切なカバーを求め、引き受けた再保険会社は誠実に再保険責任を遂行するという「絶対善意」の前提のもとに成り立っているため、元受保険会社と再保険会社との間では相互の信頼関係が必要になります。
このように、再保険取引は過去から積み上げられた商習慣や取引実績が重要な要因になります。実務上も、特定の再保険カバーをマーケットから調達しようとリサーチしたところ、特定の決まった再保険会社に出再することを希望されるケースもあります。また、ロンドンのパブでは顔見知りの再保険ブローカーや再保険会社が酒を交わしながらビジネスをするという習慣も、未だに残っているようです(コロナ禍においてはさすがにできませんが)。
このような前提やビジネス上の習慣がある中で、再保険ブローカーは重要な役割を果たします。すなわち、元受保険会社と再保険会社との間に入って、豊富な情報や人脈を駆使して、マーケットの時流を読み取り、交渉を仲介していきます。再保険ブローカーは出再者の交渉代理人として再保険会社と直接交渉にあたることから、当然出再者が移転したいリスクの詳細を理解しておく必要があると同時に、再保険マーケットの状況も把握し、出再者が希望する条件や料率等が受け入れられるかどうかも精通し出再者に適切なアドバイスをしながら、再保険会社に対しては出再者の条件を受け入れさせるように交渉していく必要があります。また、再保険契約が成立した後は、特約書の作成、再保険金の請求などといった事務処理も行います。
これらを1件1件の案件ごとに交渉から事務処理までを行うため、再保険ブローカーの業務は付加価値の高いものになります。
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