NTTもドコモも、ハワイにキャプティブを保有しています
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キャプティブの仕組み, 事例
日本電信電話株式会社(NTT)といえば日本を代表する企業ですが、このNTTも、そして現在ではNTTの連結子会社となったNTTドコモも実は米国ハワイ州でキャプティブを運営しています。
2018年12月に、NTT Reinsurance, Inc.がハワイ州の保険局からライセンスを付与されています。なおこれに先立ちNTTドコモは2015年、DCM Reinsurance Company, Inc.という名称のキャプティブを設立しています。
両社とも社会的インフラを担い、国内外の拠点やグループ企業も多いため、適切で効率的なリスクマネジメントは経営に重要な効果を発揮します。両社はグループ全体のリスクをグローバル保険プログラムによって管理し、保有するリスク、移転するリスクを切り分け、効率的なリスクマネジメントをしていると思われます。
象徴的なのはNTTの株主です。グループを束ねる日本電信電話株式会社の株主として、議決権割合で34%の株式を、財務大臣が保有しているのです。財務大臣は保険業界を含む金融行政を司る財務省のトップなので、財務大臣が大株主であるNTTがハワイにキャプティブを設立したということは、キャプティブ誘致を推進したい米国ハワイ州にとっても、設立を検討している他の企業にとってもフォローの風となりました。
さて、このようにようやくキャプティブの採用を始める企業が次第に増えてきた日本のリスクマネジメントに関する環境ですが、ここでNTTやドコモが行っているサービスの中から、中小優良企業にとっても参考になるケースがあるのでご紹介します。
NTTでは、インターネット接続サービスを契約している契約者が一定の月額料金を支払うことにより、ネットに接続しているパソコン・タブレット、テレビ、周辺機器の過失故障や破損などを補償するサービスがあります。
またNTTドコモでは「ケータイ補償」というサービスで、一定の月額料金を支払うことにより、スマートフォンやタブレットなどの故障・水濡れ・盗難・紛失など、もしものときにあらゆるトラブルをサポートします。
これらは一見損害保険のように見えますが、補償の内容を、補償上限の範囲内での修理や同等品の交換とすることにより、損害保険の範疇からはずれたNTTやドコモがオリジナルで提供するサービスになっています。オリジナルのサービスなので、事業が成り立てば自由に設計ができ、これが新たな収益源となります。実際、NTTドコモの2019年度の決算から推測すると、ケータイ補償を含めたあんしん系サポートのみで、3300億円の収益を得ていることが分かります。
これらは実際にユーザーのスマホや機器が故障や破損した場合、修理や交換に対応するものですので、しっかりと裏側で損害保険会社と約定履行費用保険を契約し、補償(修理や交換)実施の部分をカバーします。
補償実施が想定より少ない場合はいわゆる事故率が低くなるため、裏受けする約定履行費用保険は掛け捨ての状態になります。このようなサービスは一般的に事故率は低くなり、結果として自社で保有可能なリスクであれば、この保険をキャプティブに出再してリスクを保有する、というスキームをつくることが見込めます。
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