保険会社の再保険取引を理解するための基礎知識(1)
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キャプティブの仕組み
再保険は、リスクを引き受けた保険会社がそのリスクの一部を所定の保険料で再保険会社に移転しリスクを分散する行為であり、これは出再者である保険会社にとって強力なリスク管理手段になります。この再保険取引にはいくつかの種類があり、ニーズによって使い分けられます。
まず、再保険を契約手続きの違いから分類すると2種類、すなわち任意再保険と特約再保険に分類されます。
任意再保険
任意再保険は、再保険を必要とする元受保険契約1件ごとに、出再者と受再者(再保険者)がその都度任意で再保険契約を締結します。
例えば石油プラントや大規模な工場建設等、大規模で単一のリスクについて、所定の稼働期間または建設期間にわたり契約されるケースがあります。
任意再保険の場合、その都度任意で再保険契約を締結するという性質上、出再者は自らが引受けたあるいは引き受けようとする保険契約に、どの再保険会社に、どのような再保険条件で、いくら出再するかについて等を交渉して個別に決定していきます。リスク評価や取り扱いのプロセスが複雑・高度になる傾向が多く、そのため再保険専門プレイヤーの中でも専任の任意再保険部門によって管理されることが一般的になります。オーダーメイドで必要な再保険カバーの獲得をすることが可能になります。
一方、後述する特約再保険と異なり個別の再保険契約として処理されるため、再保険市場の動向を把握しながら1つずつ条件を決定していく作業になります。そのため、再保険の条件が決定して手配が完了するまで、元受保険契約の引受けを確定できなかったり、そもそも希望する再保険条件が得られなかったり等の不確定要素が増えます。結果として、任意再保険は事務処理が煩雑になり、コストが割高になります。
特約再保険
特約再保険は任意再保険とは異なり、出再者全体のポートフォリオを管理します。すなわち、再保険を必要とする多くの元受保険契約について、この先必要になることが予想される出再対象となる契約内容や出再するリスク量等を、あらかじめ、包括的に決めておき、その再保険条件に合致する元受保険契約については、全て約定した条件で出再する義務を出再者は負うことになります。また同時に、再保険者はこれを包括的・自動的に引き受ける義務を負うことになります。
特約再保険は典型的には、保険種目ごとに設定され、再保険契約期間は1年で毎年契約更改が行われます。任意再保険と比べて管理が容易で事務処理も簡略化されているというメリットがある一方で出再者は、実際は自社で保有可能なリスクであっても契約により必ず出再しなければいけないため、経営の効率性の観点からするとデメリットになります。
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