2020年、ハワイで設立された日本企業キャプティブはどのように活用されているのか?
公開日:
:
キャプティブの仕組み, 事例
以前の記事では、ハワイでキャプティブを設立する日本企業が増えていることに触れました。具体的には何社が、そしてどのような業種の企業が、キャプティブを設立したか調べてみました。
まずはハワイキャプティブの全体像を把握してみます。ハワイの保険局のウェブサイトによると、米国ハワイ州において2020年12月31日現在でアクティブなライセンスを持つキャプティブは、全部で242社あります。そのうちの大部分は、再保険のみを引き受けるクラス1キャプティブか、再保険並びに元受けが可能なクラス2キャプティブです。なお、PCC(プロテクデット・セル・キャプティブ)のクラスで設立されたクラス4キャプティブについては、セルは独立した法人格を持ちますがこの統計上は数字にはカウントされず、コアキャプティブのみカウントされています。
全242社のキャプティブの内、2020年にライセンスが付与されたキャプティブは21社ありました。率にすると8.6%であり、比較的目立つ割合のように見えますので、キャプティブ設立の動きが活発になっていることが伺い知れます。
21社のうち、日本企業によるキャプティブ設立は、5社ありました。
情報が開示されていないため推測になりますが、どのようにキャプティブを活用しているか考えてみます。
Ktouch Insurance, Inc.
高級車販売やタクシー事業を手掛ける、國際グループのキャプティブです。一般的に、高級車は自動車保険に入りづらいと言われていますが、同社グループ全体で高級車の自動車保険のボリュームがありそうです。それらの母集団の損害率が低ければ、キャプティブにリスク移転してリスクコントロールをすることが可能と思われます。
NANZANDO Re, Inc.
調剤薬局を運営する企業が設立したキャプティブです。賠償責任保険でのキャプティブ引受の可能性があります。
New Gaia Gold Insurance, Inc.
不動産事業やメガソーラー事業を中心に、多角的に事業展開をする企業が設立したキャプティブです。動産総合保険、火災保険、地震保険のリスクをキャプティブで保有することが考えられます。
Renewable Energy Reinsurance, Inc.
再生エネルギー関連を手掛ける企業が設立したキャプティブのようです。
Terumo Global Reinsurance, Inc.
以前記事にも触れた、世界的な医療機器のメーカーであるテルモが設立したキャプティブです。グローバル保険プログラムを導入し、さらには地震保険も調達したことを以前の記事で紹介しました。
このように、テルモのような上場企業のみならず、非上場の優良企業もキャプティブを上手に活用している様子が伺い知れます。
事業リスク対策保険パートナー募集中
K2 Partnersは海外のキャプティブ(再保険)を使った事業リスク対策保険を顧客へ提案するパートナーを募集しています。主に保険屋さん、税理士、経営&財務コンサルタントなど専門性の高いプロフェッショナルなパートナーと一緒にやらせてもらっています。ノルマ、費用など一切ありません。
関連記事
-
保険会社の再保険取引を理解するための基礎知識(1)
再保険は、リスクを引き受けた保険会社がそのリスクの一部を所定の保険料で再保険会社に移転しリスクを分散
-
アジアの金融センターとしてのラブアンとキャプティブ
キャプティブの設立を検討する際に身近な設立地として注目を集めているのが、マレーシア領ラブアンです。ラ
-
事例研究:テルモが米国ハワイ州にキャプティブ設立②
医療機器製造・販売の上場会社であるテルモは2020年2月、米国ハワイ州にキャプティブを設立しましたが
-
事例研究:テルモが米国ハワイ州にキャプティブ設立①
医療機器製造・販売の上場会社であるテルモは2020年2月4日に投資家向けに、米国ハワイ州にキャプティ
-
事業リスク開示し、具体的に対策を講じていたソニーの事例
事業リスク開示にまつわる事例として興味深い、ソニーの事例をご紹介します。2016年4月に発生した熊本
-
再保険マーケットとは?メインプレイヤーの保険料、市場規模はどのくらいか?
前回は再保険マーケットの機能を中心に、再保険マーケットの本質的な理解を試みました。今回は、再保険マー
-
保険会社の再保険取引を理解するための基礎知識(2)
前回は再保険を契約手続きの違いから、任意再保険と特約再保険に分類し、その特徴や実務面の違いを比較しま
-
改めて再保険ブローカーの重要な役割について
再保険は保険会社の保険と言われている通り、保険会社が再保険料を払って、自ら引き受けたリスクを他の保険
-
ラブアンキャプティブ セミナーレポート#2
前回も触れましたが、ラブアンにおけるキャプティブを含む保険業界の現状は、次のようになっています(20
-
グローバル保険プログラム
企業の事業活動がグローバル化するに伴い、リスクマネジメントも同様にグローバルな視点が求められています