地震リスクについて改めて考えてみましょう(3)〜企業の損害とその対策〜
これまで、地震のリスクに関して触れてきましたが、この記事では、実際に大地震が発生した場合、企業はどのような損害・損失を被る可能性があるかについて整理を試みます。それにより必要な対応・対策が見えてきます。
地震リスクについて改めて考えてみましょう(1)〜地震発生の形態〜
① 従業員の被災
地震によって会社の建物や財物が損害を被ると同時に、従業員やその家族も被災します。その場合、企業活動は大きな影響を受けます。従業員が死傷した場合はもちろんのこと、従業員の家族が死傷した場合にも従業員の業務遂行が困難になります。
従業員は企業にとって最も重要な資産であるため、企業は従業員とその家族の安全確保を最優先に、地震の対策に取り組んでいく必要があります。
② 建物の損失
建物や機械設備などの財物の損失は、地震による振動やそれに伴う地盤液状化による建物の倒壊・損傷や機械設備の転倒・損壊によって生じます。さらには、地震後に発生する火災、津波、あるいは地震によって防潮堤や堤防が決壊することによって引き起こされる浸水などの、二次被害によっても生じます。
1981年に建築基準法が改正されたことにより耐震基準が強化された結果、同年以降に建築された建物については地震による被害を免れやすくなっています。しかしながら、この新耐震基準の基準は人命の確保を目的としている背景から、倒壊を免れたとしても建物自体は大きな損傷を受ける可能性は残されています。
③ 操業の停止、縮小
サプライチェーンの拡大に伴い、企業活動は相互に複雑に依存しています。そのため、仮に地震による損害を、自社ではある程度抑えられたとしても、電力・ガス・水道等のライフラインの供給停止、取引先の被災による原材料・部品の調達不能、販売先や納入先の喪失、道路や鉄道の途絶による物流マヒ等によって、長期間の操業停止や縮小を余儀なくされます。
④ 経済の低迷
被災地域の被害が甚大に及ぶ場合、経済活動の停滞や市場の縮小によって企業の売上高や利益が減少することが予想されます。
地震の発生は予測ができず、また地震それ自体を抑えることもできないため、地震防災対策は自社の責任で、地震発生時の被害を最小限に抑えることが肝要になります。次回、地震防災対策について整理をしていきます。
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