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地震リスクについて改めて考えてみましょう(4)〜地震の防災対策〜

公開日: : 災害リスク, 基礎知識

これまで、地震のリスクや地震による被害について理解を深めてきましたが、最後に、地震の防災対策について整理を試みます。

地震は、いつ発生するか、どれくらいの規模の地震になるかということは予測できず、また抑制することもできませんので、企業は自らの責任で必要な地震防災対策を講じ地震発生時の被害を最小限に抑えるという取り組みが必要になります。

そのため前回整理をしたように、地震により想定される被害を把握し、地震リスク対策として、建物・設備の耐震性の向上、危機管理計画を策定することによる被害の局限化、事業継続計画の策定による事業の継続と早期復旧を図ることが必要になります。

具体的には、次のように地震リスク対策を講じていきます。

① リスク状況の把握

地震による損失は、地震の規模、建物の強度、地盤の状況などによってそれぞれ異なるため、まずは建物等の物件のリスク状況を把握し、これに対応した地震リスク対策を講じることになります。

(1) 想定する地震の規模

地震リスク対策を講じるにあたり、地震の規模は震度6強程度の地震を想定して対策する必要があります。震度6強の地震が発生した場合は、木造建物の中で耐震性の低い建物は倒壊し、耐震性の高い建物でも壁や柱が破損します。鉄筋コンクリート建物では、耐震性の低い建物は壁や柱が破損し、耐震性の高い建物でも壁・柱・梁に大きな亀裂が生じることが多いため、震度6強の地震はひとつの目安となります。
また、震度6強の地震が発生すると、ライフラインではガス管や水道管も破損し、その結果としてガスや水道の供給が停止することが多いです。

(2) 建物の強度

建物の構造や形状などによって、地震の振動に対する強度や地震による火災に対する防火能力を確認しておく必要があります。耐震基準については、建築基準法による耐震基準は1981年(昭和56年)に改定され、いわゆる新耐震基準が設定されました。そのため、1981年6月以降に建てられた建物の耐震性は法令上耐震基準を満たしていることになり、一定の評価を得ています。つまり建物の建築年度は1981年6月よりも前か後かというのが、建物の強度を図る重要な指標になっています。

(3) 地盤の状況

建物が建設されている土地の地盤の状況も重要です。地盤については岩盤が最も強く、次に砂礫、砂やシルト(砂よりも細かい粒子の泥)の順で地盤が弱くなります。砂やシルトの地盤の上に大規模な建物等が建設される場合には、通常地盤改良工事が行われます。その場合、水抜きが行われた後基礎杭が深く打ち込まれ、土台を強固にします。それでもなお大地震により液状化現象が発生すると、建物が傾いたり基礎杭が破損することがあることも考慮に入れる必要があります。

② 建物・設備の耐震性の向上

地震発生時に人命の安全を確保し、損失額を最小限に抑えるためには、建物の耐震化を進めることが重要になります。しかしながら耐震改修工事は大きな費用がかかるため、各建物の耐震性の評価を行い、優先度の高いものから改修を進めていくことが現実的となります。

昨今は情報システムが業務の中枢機能になることが多いことから、データセンター等の建物は高い耐震性を備えた建物にする必要があり、またそのようなデータセンター等を選定することが必須となります。

工場の機械設備等については、地震の発生時に転倒や横滑りが生じないよう固定することも大切なポイントです。

また、地震発生時の停電に備えて自家発電装置を設置したり、機械設備が損傷した場合に備えて代替機を用意したり、損傷した建物等を復旧するための資材を事前に確保したり、さらには工場やサプライヤーの分散化をすることにより、地震による休業損失を軽減させる効果が期待できます。

③ 緊急時計画の策定

地震発生時に適切な対応を行い、被害を最小限に抑えるためには、大地震の発生を想定した緊急時計画を策定しこれをマニュアル化し、従業員にも周知徹底することが大切です。

緊急時計画の最優先事項としては、従業員やその家族の安全確保のための計画になりますが、これには「避難誘導」「安否確認」「応急医療」「非常用食料・飲料水・医薬品等の確保」などがあります。大地震時には通信や交通が途絶する可能性が高いため、その場合にどのように対応するか検討しておく必要があります。

並行して、BCP(事業継続計画)を策定します。建物・設備の被災状況、原材料・部品の供給元や製品の納入先の被災状況、電力・ガス・水道の供給停止、物流の途絶等について確認し、どのように事業を継続するか、どのように業務を再開するかについて、策定していきます。

④ リスク・ファイナンス

このように、地震リスクの把握、耐震性の向上等の事前対策、緊急時計画・事業継続計画の策定をしたうえで、資金面での必要な備えを対策します。

近年は、保険に代わるリスク・ファイナンス手法として証券化(キャット・ボンド等)が活用されることもあります。地震等の異常災害リスクの移転先として金融市場にそれを求める形で、例えば一定規模以上の地震が発生した場合に一定金額が支払われるパラメトリック方式は、損害に対して支払いが行われる保険とは異なるアプローチで、地震リスクに備えることが期待できます。

リスク・ファイナンス手法の選択肢は広がってきましたが、やはり地震リスクに対するリスク・ファイナンスの手法として王道なのは地震保険です。しかしながら世界的に見ても地震リスクが集積している日本での企業の地震保険はコストが非常に高く、二の足を踏んでしまうのが現状です。その対応として、キャプティブを通じて海外の再保険マーケットからキャパシティを調達する手法が考えられます。

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  • 事業保険アドバイザー:渡辺隆史
    <経歴>
    野村證券で4年、国内損害保険会社で10年勤務。 その後2020年5月から弊社事業保険アドバイザーとして勤務。

    <趣味>
    読書、映画鑑賞、ジョギング

    <出身地>
    東京都江東区

    <自己紹介>
    国内の金融機関を経て、海外の再保険(キャプティブ)知り、この職に就きました。世界最大の自然災害リスクを抱える日本の企業に事業リスク対策保険(損害保険、傷害保険、地震保険、災害保険、賠償責任保険など)を海外のキャプティブを使うことで加入することをアドバイスしています。生保マン、税理士、経営&財務コンサルタントの提携パートナー募集中。

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