ラブアンキャプティブ セミナーレポート#2
公開日:
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最終更新日:2020/12/08
キャプティブの仕組み, セミナー
前回も触れましたが、ラブアンにおけるキャプティブを含む保険業界の現状は、次のようになっています(2019年現在)。
・キャプティブ 52社
・再保険会社 64社
・保険ブローカー 80社
・キャプティブマネージャー 23社
ラブアンでは、キャプティブの目的に応じて異なるライセンスが当局から与えられます。主なものの概要を見ていきます。
1. ピュア・キャプティブ シングル・キャプティブ
自社のみでリスク管理をするためにキャプティブ組成をする場合に選択されます。キャプティブのリスクを限定するために設計された再保険契約を除き保険リスクは自社グループに内包されますが、ピュア・キャプティブは、グループ全体のリスクを監視し効率的なリスクマネジメントが可能になります。
2. グループ・キャプティブ、アソシエーション・キャプティブ
グループ・キャプティブは、同業者同士で異なる複数の親会社が所有するキャプティブです。独立したキャプティブを運営するための十分な資力が伴わない場合検討されます。しかしながらグループ・キャプティブは、参加者の一部の業績悪化によりキャプティブ収益が影響を受ける可能性があるという点において、潜在的な欠点があります。
3. レンタ・キャプティブ(親会社・子会社)
マスター(親会社)・レンタ・キャプティブは、既存のキャプティブの資本基盤にキャプティブを形成したいものの、別の事業体を組み込む費用や時間をかけずに、第三者がアクセスする仕組みです。子会社のレンタ・キャプティブは、個別のライセンス、資産、および口座を持ちます。
4. 保護セル・キャプティブ
レンタ・キャプティブに似ていますが、保護セル・キャプティブは、各ユーザーの資産が法律によって互いに保護されていること(倒産隔離機能)が異なります。
ラブアンはOECDによるBEPS行動計画の要件を満たすため、国内法の一部を修正し、国際基準に準拠した運用を開始しました。これにより、実質活動要件を満たすことで透明性の高いキャプティブの運用が実現できることになります。さらにラブアン法人としてキャプティブを設立した場合、税制優遇措置が適用され監査済み純利益の3%という税制を選択することが可能とされています。
またラブアンの市街地は非常に小さく、ラブアン金融センターを中心に信託会社やキャプティブマネージャーが集積しているため、物理的な距離感も近く効率的に運営ができます。
上記のメリットを享受するための必要な要件として言及した実質活動要件は、具体的には次のようなものです。
ラブアンの法令上、キャプティブは最低雇用要件としてラブアンにて一定数の常勤スタッフを雇用しなければなりません。さらにキャプティブは、最低年間支出としてラブアンにて一定金額を支出しなければなりません。これらは法令によって定められておりますが、人数や金額については見直される可能性があり、常に最新の情報を入手することが必要になります。このような外形的な要件を満たさないことにより、ラブアン法人としての優遇措置を受けることができなくなってしまうことにつながりますので注意が必要です。
具体的にキャプティブを設立するにあたっては、大まかには次のようなステップを経ることでキャプティブの運営が始まります。
1. カンパニー・セクレタリー(会社秘書役)の任命
マレーシアで会社設立する際、実際の作業は国家資格を持つカンパニー・セクレタリーを任命します。信託会社がその役割を担います。
2. キャプティブマネージャーの任命
ラブアンで認可されたキャプティブマネージャー(引受管理者)と呼びます)を任命します。キャプティブマネージャーは保険の引受業務、ソルベンシーの管理、経理・会計、取締役会の監視等キャプティブ運営の重要な役割を担います。
3. 監査人の任命
ラブアンで認可された外部の監査人を任命します。
4. 設立実務
通常では任命したカンパニー・セクレタリーによって、次のような設立実務が進められていきます。
・ 法人名の予約
・ 会社名の許可申請(ネームサーチ)
・ ラブアン金融庁にライセンスの申請
・ 法人の設立および銀行口座の開設
・ ラブアン金融庁よりライセンスの発行
手続きのほとんどのプロセスは法人を設立することになりますが、キャプティブを設立するというのは「金融機関(保険会社)を設立すること」と同義になります。当然、監督当局の厳格な審査があり、設立の許可が下りなければキャプティブは設立できません。キャプティブ設立の際は専門家に相談する必要があります。
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