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事例研究:テルモが米国ハワイ州にキャプティブ設立②

公開日: : キャプティブの仕組み, 事例

医療機器製造・販売の上場会社であるテルモは2020年2月、米国ハワイ州にキャプティブを設立しましたが、これは欧米で先行しているリスクマネジメントの考え方を導入した典型的な事例となっています。

ここでは、テルモが行ったキャプティブ設立・運営に至る具体的な取り組みについて見ていきます。

  1. グローバル保険プログラムの導入

    テルモは現在、世界160以上の国や地域で事業を展開し、売上の3分の2を海外が占めるようになっていました。海外展開を積極的に行ってきた一方で、保険についてはグローバルレベルの共通化はなされておらず、現地法人がそれぞれ対応しているという状況でした。

    そこでまず、既存の財物保険、企業総合賠償責任保険、物流貨物保険、D&O(会社役員賠償責任保険)といった主要な保険種目について、日本の本社が方針を定め主導する形で、グローバル保険プログラムを導入しました。

    グローバル保険プログラムの導入によって、グループ全体で見た保障内容の充実化および効率化が実現しましたが、保障の充実の副産物としての保険料コストも増加していきました。また、世界的な保険市場のハード化の流れの中で、外部的な影響による保険料の上昇の流れを予測した結果、次のアクションとして自家保険化に取り組みました。

  2. 自家保険化の推進

    グローバル保険プログラムが一定の成果を上げてきたことを確認し、次のステップとして自家保険化の推進、すなわち自社の財務状況を考慮したうえでリスクの一部を自家保有するキャプティブの導入を進めました。

    キャプティブを導入することにより、例えば子会社単体では保有しきれない損害もグループ全体でみれば吸収可能な損害について、キャプティブを活用することによってリスク保有することで、さらなるリスクコントロールの最適化が可能になります。

  3. キャプティブのメリットを活かした補償の拡充=地震リスクのカバー

    自家保険化の推進によってリスクの一部を自家保有し、より総合的なリスクマネジメントが可能になりましたが、これにより、キャプティブを通じて再保険マーケットに直接アクセスできるようになるという効果も得られました。

    そこで、日本の地震・噴火リスクをカバーするために、グローバル保険プログラムの主要な保険種目に加え地震保険も組成し、日本国内において南海トラフ地震・首都直下型地震や富士山の噴火等を想定したリスクに対してカバーすることが可能になりました。

    これは同社が再保険マーケットから地震のリスクをカバーするための引受先を調達することができたためで、これにより通常国内の保険会社では引き受けが困難とされる、企業の財物に対する地震のリスクに対する保障を獲得することができました。

グローバル企業であればこのようなグループ全体を俯瞰した保障の最適化の恩恵を受けやすいと言えますが、一方で保険をアレンジするブローカー側にも、高度な専門知識とグローバルなネットワークが必要となります。また、そこまでグローバル展開をしていないがいわゆる優良企業クラスにおいても、キャプティブの設立・運営により、リスクの一部自家保有によるコントロールや再保険マーケットへのアクセスの効果を享受するという道は開けます。

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  • 事業保険アドバイザー:渡辺隆史
    <経歴>
    野村證券で4年、国内損害保険会社で10年勤務。 その後2020年5月から弊社事業保険アドバイザーとして勤務。

    <趣味>
    読書、映画鑑賞、ジョギング

    <出身地>
    東京都江東区

    <自己紹介>
    国内の金融機関を経て、海外の再保険(キャプティブ)知り、この職に就きました。世界最大の自然災害リスクを抱える日本の企業に事業リスク対策保険(損害保険、傷害保険、地震保険、災害保険、賠償責任保険など)を海外のキャプティブを使うことで加入することをアドバイスしています。生保マン、税理士、経営&財務コンサルタントの提携パートナー募集中。

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